F、施工業者との接点


13. 設計施工一括請負のリスクの回避


 住宅を建てようと決めて、施工業者を捜す段になって、友人・知人の紹介で依頼するケースは多い。前回とり上げたIさんの場合もそうで知人の紹介で知り、その工務店がてがけた物件をご自身でみて、そのでき具合を確認していた。しかしながら、トラブルから建築相談にこられ、現地調査をしたら重大な欠陥が判明した。
 Iさんの住宅を請け負った工務店は欠陥業者ではなく、むしろ地場では中堅の工務店で通っている。その工務店の社長も、欠陥を指摘されるまで自分たちがこのような手抜き工事をしたとの自覚はなかった。建築相談に訪れたIさん自身、これほどの欠陥があると認識していたとはおもえない。見た目ではほとんどわからないのが問題である。完成してしまえば、住宅の外観では専門家でさえわかりづらい。しかし、構造的なこの種の欠陥は10年、20年経つと倒壊の危険さえある。
 なぜこのようなことになるのであろうか。
 工事中の品質管理チェックがおこなわれていないことに、その原因がある。それは昨今の大工・工務店の仕事のやり方が、昔の棟梁のそれと異なる時代背景があって、一般の人にはそこまで理解できず、設計施工一括請負の落とし穴となっている。 
 建築の品質管理は、屋根とか塗装とかの各専門工事毎にチェックがはいる。基礎コンクリート工事を例にとると、そこでの配筋検査で @ 鉄筋の種類と本数が設計図通りになっているか A コンクリートの幅と高さが設計図通りになっているか B 基礎の深さが設計図通りになっているか をみる。国土交通省でも欠陥住宅の多さに危機感を強め、工事監理の重要性を改めて一般の人に啓発する冊子を今年一月に作成したほどだ。設計施工が分離されていれば、設計事務所が設計監理のもとで工事中のチェックをしてくれるはずである。
 工事請負契約に工事保証を特約で付け加えることもすすめたい。大規模工事では、一般におこなわれているが、住宅ではあまりないのでなじみがうすい。工務店の倒産で、途方にくれる防止策として活用したい。工務店側にとっても、客が安心して契約できるメリットがある。設計事務所では、建物の大小にかかわらずとりいれている。
 設計事務所というのは、かように住宅を建てようという人にとってまことに頼りになる存在となる。建物の構造・デザイン・法規上のチェックから契約の立合まで多岐にわたっている。ぜひ活用していただきたいものである。

(小島)





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